【怖い話】一声呼び(ひとこえよび)人間を山の中に引きずり込む化け物らしい

私の地元は岐阜県の郡上市という場所で、面積の多くを山が占めている地域です。

子どもの頃は毎日実家の裏にある山の中で、祖父や兄と遊んでいました。

いまから16年前、私が15歳の時、「山の中にしかけたイノシシ用の罠を見に行こう」と祖父に誘われました。

祖父は当時から右膝が悪く、歩けはするのですが毎日痛い痛いと言っていたので、膝が心配だったこともあり、あまり気は乗らなかったのですが一緒に行くことにしました。

軽トラに乗り込み裏山を20分程進んでいくと、知らないお爺さんが前を歩いていました。

祖父の知り合いだったらしく、祖父は軽トラから降り、しばらく談笑が始まりました。

私はその間暇だったので、山の中で深呼吸をしたり、草を摘んだりして、会話が終わるのを待っていました。

10~15分くらいすると、山の奥、進行方向から「おーい」という男性の野太い声が聞こえてきました。

「あれ、またおじいちゃんの友達かな。これでまた待ち時間長くなっちゃうかな、参ったな」などと思いながら、手元の草を弄っていました。

「おーい」「おーい」「おーーい」

ふいにそんな声が聞こえてきました。祖父もその知り合いのお爺さんも、その声に対してなんのレスポンスも示しません。無視をしているのです。

「あれ、知らない人の声だったのかな」と思いながら2人の方に目をやると、先程までの穏やかな表情とは一変、非常に強張った顔つきでお互い見つめ合っていました。

一瞬でただならぬ空気を感じましたが、なにが起きたかは分かりません。

数秒の間隔があき、また山の奥から「おーい」という声が3回、聞こえました。その声は、近づいたり遠ざかったりしていることに気づきましたが、どれだけ見渡しても人の姿はありません。

私は誰かが山の中で迷ったか、怪我をして動けないのではと思い、「ちょっと探してくる」と祖父に声をかけた直後、「だしかん!!!(郡上弁で「だめ!」の意味)」と怒鳴られました。

すでに高齢の祖父の切羽詰まった表情、大きな声に非常におどろきました。

「えっ…」と固まっていると、「軽トラに乗れ、早く!」とせかされ、訳もわからぬまま軽トラに戻りました。

あんなに普段膝を痛がっていた祖父が、走って軽トラに駆け寄っていました。

祖父の知り合いも軽トラの後ろに乗り、結構なスピードで山を降りました。

その場を走り去る直前まで、「おーい」という声は後ろから聞こえていました。

家に着き軽トラから降りると、真冬だというのに祖父も祖父の知り合いも汗をかいていました。

私は訳がわからず、「なんで急いで山から降りたの?誰か助けを呼んどったんやないの?助けなくていいの?」と聞きました。

すると祖父は、「あれは一声呼び(ひとこえよび)っていって、人間を山の中に引きずり込むやつやから、絶対に声に反応したらいかんのや」と言いました。

15年間、ずっと郡上の山間部で生きてきて、山怖系の怖い体験も、怖い話も全く聞いたことがなかったのに、こんなにも急に自分が体験するなんて、正直当時からオカルト好きだった私は恐怖よりもワクワク感が勝っていました。

「反応したらどうなるの?」と祖父に聞くと、「反応したらどんどんどんどん山の奥深くまで連れていかれる。山の中で姿が見えんのに「おーい」とか「もし」とか聞こえても、絶対反応したらいかん。あいつらは一声しか話せないから、山の中で誰かに話しかける時は、二声(もしもし等)で話しかけんといかんよ。とりあえず今日は終いや、罠は明日見に行く」と言われました。

正直まだまだ聞きたいことは沢山あったのですが、あまり多くを語りたくなさそうに見えたのと、走ったせいで膝が痛いと騒ぎ出したので、諦めました。

それから月日が経って大人になり、帰省した際に現在91歳の祖父に改めてあの時の事を聞こうとしても、「絶対反応したらいかん」「それだけや」「とにかく危ないから」「これ以上は特に話すことない」と言われてしまいます。本当に特にエピソードはないのか、隠しているのか、未だに私は自分が唯一経験したオカルト的なこの体験の詳細が、気になって仕方ありません。

Posted by takahashi