【怖い話】「またね。」という呪いの言葉が、頭から離れない

これは私が小学生の頃。多分四年生くらい。私のお母さんはとにかく旅行が好きな人で、旅行に行くのも計画を立てるのも大好きらしかった。

年に2度くらいはどこかに旅行に行ってだんだけど、その年は両親共に多忙で11月上旬に一回目の旅行に行った。

場所はあんまり覚えてない、興味なかったのもあるかもしれない。でも、海が結構近くにあった気がする。

今回の旅行はおばあちゃんたちも連れてだったから、私、母、父、兄、弟、祖父、祖母、母妹の計8人での旅行だった。

行き先が遠かったこともあって、旅行先に着いた頃にはもう周りは真っ暗。

泊まり先のホテルに行こうにも山道ばかりで軽く迷子になってしまって、さらに遅い時間にホテルについた。

ホテルの周りは先程山道で迷子になったとおり山奥にポツンとたっていて、結構怖い雰囲気だった。車に乗っていただけだったけれど、かれこれ14時間ほど車に乗りっぱなしだったこともあり、全員疲れていたと思う。

チェックインを済まして、部屋に荷物を置くとすぐにお風呂に入った。夕飯はあらかじめ済ましていたので、みんな各々好きなことをしながら寝る準備をしてた。

大人たちは、車を運転する父と、お酒が苦手な祖母以外は少しだけ飲んでいた気がする。そんなこんなで就寝しようと布団に潜り込んだ。

電気も消して、寝息が聞こえ始めた頃だろうか、急に窓が開く音が聞こえてきたのだ。

私自身結構なビビりなので、その音だけで既に汗が噴き出してやばかった。頭の中はもう大パニック「え、なになに。だれ?でもここ三階だし、人が入ってくるはずないよな」って頭の中でずっと考えてた。

カーテンが大きく靡いたかと思うと、黒寄りの紫っぽい人型の何かが入ってきた。ソイツの姿を見て、幼いながら見つかったら殺されるんじゃないかと思った。

笑ソイツはゆっくり、ゆっくり、「ネチャ、ネチャ」という粘着質な音を立てながら先程まで母たちがお酒を飲んでいたテーブルに近づいていく。

テーブルの前で止まったかと思うとお酒と一個のコップを手に取って、これまたゆっくりと「ネチャ、ネチャ」と窓へと向かっていくのだ。

窓の前までたどり着いて、「やっと居なくなる!」と内心胸を撫で下ろしていたのも束の間。ソイツはぐるりと窓の外へ向けていた顔を180度回してこちらを見つめてきたのだ。

パチリと目が合う。なんとも悍ましいソイツの顔に恐怖が限界を越えたのか、そこで記憶は途切れていた。(顔は思い出したくもないので詳細書けない、すまん)

次に目を覚ますと、父たちが荷物をまとめて出発する準備をはじめていたところであった。まず第一に自分が生きていることに安堵した。

今までで一番生を実感したと今でも思ってる「昨日は疲れていたし、きっと夢か幻覚を見たんだ」と自分に言い聞かせて、チェックアウトを済まして、車に乗り込んだ。

そのままホテルをあとにしようとしたんだが、ホテルの方から視線を感じたのだ。

なんだと思って目を向けると、昨夜私たちが泊まっていた部屋の窓から、アイツが顔を覗かせている。

瞬間昨晩の出来事が鮮明に脳内に浮かび上がってきて、私は思いっきり視線をはずした。

「いやいや、大丈夫。だって今はみんないるし、大丈夫。大丈夫。」呪文みたいに頭の中で大丈夫。と繰り返す。夢じゃなかったと、その時の絶望感といったらなかった。

頭を抱え込むようにして体を丸める。あと少しで山道をぬけるという父の声に安堵する。あと少し、あと少し。

「ベチャ」

嫌な音が私の左隣から聞こえた。

体が固まったように動かない。顔を動かそうにも「ギギっ」という音しか鳴らない。

アイツだ。そう思うほかなかった、この数時間の間に嫌というほど聴き慣れてしまったこの粘着質な音は、アイツしかいないと。

窓の外は見れなかった。だってアイツがいるのだから。私の視線は前に固定されて動かなかった。

そしてようやく山道をぬける。山道を抜ければアイツも追ってこないだろうと謎の自信があったのだ。山道をぬければ、きっと。アイツが張り付いているであろう窓がある場所も、山道をぬける。

そんなとき、今でも脳裏に焼き付いて離れない、この世のものではないような地を這う低い声が鼓膜をゆらした

「あーあ、またね。」

この出来事がトラウマで、私は今も山の中にあるホテルにも、施設にも行くことができずにいます。そして、私は今も窓の外を見ることが出来ないのです。

だって、見てしまったらアイツがいるような気がしてたまらないんです。あの「またね。」という呪いの言葉が、頭から離れないのです。

みなさんも、この音が聞こえても窓の外は見ないよう気をつけてくださいね。私のように、窓の外に怯える日々を送りたくはないでしょう。

Posted by takahashi